循環器内科

塩野義の抗肥満薬

5月 17, 2016

塩野義の抗肥満薬

クレストール

クレストール

塩野義の抗肥満薬に関するニュースが出ていた。同社の年間売上高2230億円のうちクレストールが4分の1を占める。このような記載があるように、クレストール効果で奇跡の復活劇を遂げた塩野義である。ペラミビルのような期待の新薬もあるが、クレストールの特許切れ後が正念場である。体重を落とすには忍耐力が求められるが、医薬品メーカーの塩野義製薬は欧米の製薬大手が撤退した肥満治療薬の商品化に忍耐強く取り組んでいる。塩野義は大型薬となる可能性が高い抗肥満薬「ベルネペリット」の商品化にあくまでこだわっていく方針だ。この新薬開発をめぐっては、同社は成否を握る試験2件のうち1件で効能が統計上確認されなかった。製薬大手の米メルクやジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、英グラクソ・スミスクラインでは同じような薬効を持つ新薬開発が中止に追い込まれている。

ロンドンの市場調査会社データモニターの推計によれば、塩野義は2018年までに20倍の105億ドル(約9500億円)規模に成長が見込まれる市場に期待している。ただ、ポーラー・キャピタル・パートナーズのファンドマネジャー、ギャレス・パウエル氏(ロンドン在勤)は、塩野義が最終的に当局からベルネペリットの承認を得たとしても、同社が主力とする高脂血症薬「クレストール」が2016年に特許満了となるのを期に生じる年間推定6億ドル相当の売り上げの減少分を補うことはできない可能性があると指摘する。同社の年間売上高2230億円のうちクレストールが4分の1を占める。医薬品株に投資するパウエル氏は「この新薬にはさほど魅力を感じない」と述べ、「塩野義がクレストールの唯一の後継薬としてこの新薬に頼るのであれば、とても不安だ。」と語った。同氏は塩野義株を保有していない。巨大製薬企業が抗肥満薬開発から撤退欧米の製薬大手企業はこれまで副作用のない抗肥満薬の開発に失敗している。フランス製薬最大手のサノフィ・アベンティスは、新薬のリスクが薬効を上回るとした欧州連合(EU)規制当局の判断を受け、2008年10月に「アコンプリア」の開発を中止した。メルクも抗肥満薬「MK-0557(開発コード)」の開発を2005年に中止した。肥満者を対象とした試験では、薬品の投与を止めた複数の患者で体重が一部戻る結果が出ている。ファイザーも抗肥満薬の開発中止に追い込まれている。塩野義の執行役員で医薬開発本部長を務める澤田拓子氏は、大阪の研究所でインタビューに応じ、「メルクは非常に徹底的にやって撤退した」としながらも、「メルクの化合物と当社の化合物の薬効の現れ方も含めて、プロファイルに違いがあることをすでに確認している」と指摘、メルクの試験結果に比べて体重減少を広げられる可能性があるとの見方を示した。食欲コントロール、食欲やエネルギー摂取などの調整に関与する神経ペプチドYの共同発見者である立元一彦氏は、「食欲というのは基本的な欲求で、それがないと生きていけない。食欲をコントロールする神経の回路がいろいろあり、1つや2つではない。1つをつぶしても他が活動的になるという問題がある」と指摘している。製薬会社にとって、肥満治療薬は抵抗し難い魅力にあふれている。世界保健機関(WHO)は、世界には2005年時点で4億人の肥満成人がいて、その数は2015年までに75%増の7億人にまで膨らむと試算している。データモニターによれば、米国や英国を含む7市場の肥満成人の数は2018年までの10年間で14%増の1億4300万人となり、その4分の1が年間1日当たり1ドルの治療を受けるとすると、市場は105億ドル規模に成長することになる。

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