心筋梗塞

ステント

4月 6, 2016

ステント

ステント-BMS,DES-

ステント-BMS,DES-

STEMIのprimary PCIにおけるベアメタルステント(BMS)の使用に関しては、高い再灌流率を得られ、梗塞後の狭心症などの心事故も減少させ、早期退院を可能とし、心源性ショックにも有効であることが報告されており、確立した治療法になっている。一方、薬物溶出性ステント(DES)に関しては、ステント再狭窄が減少し、標的病変再血行再建(TLR)が少なくなったと報告されているが、一方で、第1世代のDES(sirolimus, paclitaxel)に関しては、1年以降に発症する超遅発性ステント血栓症(VLST)の問題も浮上している。再内皮化の遅延によるフィブリン沈着、ポリマーに対する遅発性アレルギー反応による著明な炎症細胞浸潤などの存在がVLSTの原因として指摘されている7)。STEMIはそれ自体がステント血栓症の高リスクであることに加え、緊急症例のため患者背景が不明の場合も多く、内服コンプライアンスの問題や非心臓手術に伴う抗血小板剤の中止の問題もあり、DESを留置することに抵抗があるのも現状と言える。

しかし、近年、薬剤が変化しただけではなく、生体吸収型あるいは生体適合性の高いポリマーが使用され、ステントストラットも薄く改良された第2世代DESが使用されるようになってきており、STEMIに対するPCIでの第二世代DESであるeverolimus-eluting stent(EES)のBMSに対する優越性試験が報告されている。本試験の背景として,これまでの STEMIに対するDESのトライアルでは除外症例が多くgeneralizabilityに問題があった。例えば, STEMIに対するDESの有効性を初めて検証したTYPHOON試験では 35%,約1/3にMI症例を含むRESOLUTE-AC (“all-comer”)では 44%がランダム化されたに過ぎなかった。これに対し本試験は70%と高率に登録されており,真の“all comer”という点で評価される。48時間以内に発症したSTEMI 1504例がEES群とBMS群に1対1で振り分けられた。5年後の全死亡、MI再発、再血行再建術はEES群が、BMS群より少なかった。EES群の有効性は全死亡が有意に少なかったことによった。患者指向の複合エンドポイント(全死亡、MI再発、再血行再建術)では2年後まではEES群とBMS群間に有意差はなかった(EES群14% vs BMS群17%:ハザード比0.81;95%信頼区間0.63~1.05)が,3年後、4年後はEES群のほうが有意に少なかった(15% vs 20%:0.75;0.59~0.95, p=0.017,18% vs 22%:0.78;0.62~0.98, p=0.033)。5年後の追跡終了はEES群731例、BMS群727例、2剤併用抗血小板療法実施例は10%、9%であった。患者指向の複合エンドポイントはEES群のほうが有意に少なかった(21% vs 26%:0.80;0.65~0.98, p=0.033)。EES群の有効性はおもに全死亡の有意な低下(9% vs 12%:0.72;0.52~1.00, p=0.047)、非有意ながら再血行再建術の低下となった(12% vs 16%:0.77;0.59~1.01, p=0.06)。全死亡の内訳は心臓死(6% vs 7%)、血管死(両群とも1%)、非心血管死(2% vs 4%, p=0.027)となった。デバイス指向複合エンドポイント(心臓死,標的血管MI再発,標的病変再血行再建術)もEES群のほうが少なかった(12% vs 15%:0.75;0.57~0.99, p=0.043)。また、ステント血栓症に関してもEESの方が有意に少なかった。第1世代DESでは全く認められなかった結果が出たという点で非常に注目され、今後STEMIへのDES留置が標準化していくことへ結びつくものと考えられる。

また、船橋市の心筋梗塞では未承認であるが、everolimus溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)が開発されている。everolimusをコーティングした厚さ150μmのポリ-L-乳酸製のスキャフォールドであり、ポリ-L-乳酸は体内で完全に加水分解され、クエン酸回路を介して2年以内に体内に吸収されるものである。BVSのSTEMIへの留置に関しては、BVS STEMI FIRST試験9)より、ST上昇型MI患者において、BVS留置後のTIMIフロー3の達成率は高く、スキャフォールドのアポジションは良好であったことが報告されている。また、PRAGUE-19試験の1年追跡より、STEMI患者におけるBVSを留置後の安全性は高く、1年の再狭窄率は2%であることが示された。しかし、現在大規模試験が進行中であり、今後の臨床経過がどのように推移していくかによって、BVSのSTEMIにおける有効性が明らかにされるものと期待される。血栓吸引療法、末梢保護デバイスprimary PCI 時に血栓吸引療法を先行させることは、末梢へ飛散するプラーク破片や血栓の量を減らし、no reflow現象の軽減や心機能の改善に寄与する可能性がある。複数の臨床試験により閉塞部位、TIMI 血流分類、血栓量を問わず、より良好な再灌流と予後改善を得られることが示唆されているが、前壁梗塞例だけを対象とした検討では、その有効性は認められなかったという報告もある。日本におけるガイドラインでは、クラスIIa(レベルB)とされている。

一方で末梢保護デバイスの梗塞領域や予後の改善に対する効果は明らかではなかったことが無作為化臨床試験の結果で報告されている。しかし、臨床現場において血栓量や血管内腔に放出されるプラーク量が多量であると推測される場合などでは、末梢塞栓や no reflow現象の軽減などを期待し、末梢保護デバイスの使用を考慮してもよいと考えられる。

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