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頸動脈血管形成術およびステント留置後の再狭窄の予測因子としての平均血小板体積

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頸動脈血管形成術およびステント留置後の再狭窄の予測因子としての平均血小板体積

Mean Platelt Volueme as a Predictor for Restenosis After Caroid Angioplasty and Stenting

Ahengze Dai, et al. , Stroke. 2018;49:872-876 (accepted February 16,2018)

頸動脈形成術・ステント留置術後のステント内再狭窄

頸動脈形成術・ステント留置術後のステント内再狭窄

背景、目的

血小板凝集は、頸動脈血管形成術及びCAS後のステント内再狭窄(以下,ISR;In-stent restenosis)において重要な役割を果たしている。平均血小板量(以下, MPV; Mean platelet volume)は、血小板反応性の指標になると推定されてきた。本研究ではCAS後の患者のISRとMPVの関係を明らかにすることを目的とした。

方法

CASを施行された261人の患者が登録された。MPVはCAS施行前に測定した。CAS施行後は6か月後、その後1年毎にDSA、CTA、二重超音波検査(duplex ultrasonography)を施行した。ISRは治療された部位の50%以上の狭窄と定義し、Cox回帰分析を用いてCAS後のISRの予測因子を明らかにした。

結果

261人の患者のうち、46人(17.6%)が12.1±16.1ヵ月のfollow up期間内にISRを起こした。多変量解析ではbaselineのMPV>10.1 fL、病変長、残存狭窄、そしてbaselineの血糖値がISRと関連していることが判明した。

結論

MPV上昇はCAS後のISRと関連していた。CAS施行前にMPV高値の患者ではCAS後の抗血小板療法を強化することが有益である可能性がある。

Introduction

虚血性脳卒中の7-20%は頭蓋外頸動脈の閉塞性病変が原因とされる。CASはこれらの部位における血管狭窄を治療する有効な治療法である。CEAと比較しCASは低侵襲で患者不快感が少なく、入院日数が短い。この治療法の有効性を裏付ける複数の大規模研究が行われて以来、CASを受ける患者数は年々増加している。しかしながら、CASのrisk-benefit比はISRに関連する遅発性の脳血管イベントにより中和されてしまう。それ故、潜在的にISRに影響を与える因子を同定することはCASの有効性を更に向上させるために不可欠である。

MPVは血小板反応性の指標とされている。大きい血小板は通常多くの濃染顆粒を含んでおり血栓形成能が高い。過去の研究ではMPV上昇と、冠動脈形成術後の再狭窄の関連性が指摘されている。しかしCAS後の再狭窄とMPVの関連性については研究がなされてこなかった。本研究ではDSA、CTA、超音波を用いて長期のCAS後の再狭窄について、ISRに対するbaselineのMPVの影響を評価した。

方法

中国の単一施設にて2005-2016年にCASが施行された患者が登録された。狭窄の程度はNASCETの基準を用いて評価された。CASは頭蓋外頸動脈の無症候性70%以上狭窄、症候性50%以上狭窄の場合にrecommendされた。CASは通常 (1) 狭窄の原因が動脈硬化に関連するものでない場合 (2) 重度の心疾患、呼吸器疾患、腎臓疾患もしくは悪性腫瘍を伴う場合 (3) 生命予後<5年の場合 (4) 抗血小板療法が禁忌の場合 (5) 粗大な神経学的機能不全もしくは認知機能不全がある場合 (6) 4週間以内の脳卒中の既往がある場合 (7) 安全なaccessを妨げるような高度の血管の蛇行や大動脈弓のvariationなどがある場合 には通常行わない。

CAS施行前にすべての患者にDAPTを施した。233人の患者では100mg Aspirin+ 75mg Clopidogrelを少なくとも7日間処方した。28人の患者では100mg Aspirinを少なくとも7日間処方し、CAS施行4時間前に300mg Clopidogrelを処方した。2人の元々warfarinが処方されている患者でもDAPTを行った。CAS施行後はwarfarin併用の患者では3ヶ月の、warfarin併用なしの患者では6ヶ月のDAPTを施した。その後はClopidogrelを終了しAspirinは永久的に継続とした。CAS施行前7日以内、施行後7日以内に静脈血sampleを採取した。MPVはSysmex XE-2100 hematology analyzer(日本の機械)で白血球や赤血球、血小板数などと共に計測された。

CASは通常局所麻酔下に施行した。鼠径部穿刺の後に70IU/kgのheparinを投与した。Targetとなる狭窄を造影にて確認した後、6Frもしくは8Frのguiding catheterを狭窄の手前のCCAまで誘導した。遠位protection deviceを留置した後、適切なsizeのPrecise / Acculink / Wallstent といったself expandable stentを誘導後、留置した。残存狭窄を検知するためstent留置後速やかに造影検査を施行した。前拡張は高度狭窄の患者の一部で施行し、後拡張は50%以上の残存狭窄を認めた例で施行した。

治療後30日以内に死亡した患者はstudyから除外した。生存患者は臨床転帰や画像所見をフォローした。患者には血管系のeventが生じたと思われる際にはいつでも受診するように伝えた。DSA、CTA、超音波はCAS施行6ヶ月後、そしてその後は年一回行った。ISRはtarget lesionの50%以上の狭窄と定義した。

連続変数はmean±SDで、カテゴリー変数は数(%)で表した。連続変数の分布パターンはKolmogorov-Smirnov検定を用いて解析した。複数の平均値の比較には1 way ANOVA(分散分析)もしくはKruskal-Wallis H検定を用いた。カテゴリー変数はx2検定及びFisherの正確性検定を用いて解析した。ISRの予測因子を同定するためにはCox回帰分析を使用した。単変量解析においてP<0.1の因子を解析した。グループ間でのISRの累積危険度の比較にはKaplan-Meier曲線を用いた。P<0.05を統計学的有意とし、統計学的分析はSPSS version 19.0とR version 3.4.3を用いて行った。

結果

全体で261の患者がCASを施行され、治療一ヶ月後に生存していた。登録された患者の平均年齢は66.5±7.8(42-86)歳で、224人(85.8%)が男性、37人(14.2%)が女性であった。ISRは平均12.1±16.1ヶ月のフォローアップ後に46人(17.6%)で検知された。Baseline characteristicsはCAS前のMPV値にて3群に分けられた(<10.4 n=81, 10.4-11.1 n=91, >11.1 n=89)。(Table 1) これらの3群はDM、症候性、病変長、リンパ球数、血小板数、CRP、t-Chol、LDL-Cholを除き同等であった。(Table 1 in Data Supplement)

単変量解析では、DM、症候性狭窄、残存狭窄、MPV高値(>10.1 fL)、血清Glucose値がISRと有意に相関していた。更には病変長、血小板数もわずかにISRと相関を認めた。Cox多変量解析では病変長、残存狭窄、baseline MPV(>10.1 fL)、血清Glucose値がCAS後のISRと相関を認めた。(Table 2)

FigureにMPV値(>10.1, <10.1 fL)によるISR free率のKaplan Meier曲線が示されている。Log rank検定ではISRのriskはBaselineのMPV>10.1 fLの患者でMPV<10.1fLの患者と比較して顕著に高いことが示唆された。再狭窄に関するMPVの陽性的中率を算出するためにはMPV抜き/込みのモデル間での予測精度をを比較するために時間依存性のROC(receiver operating characteristics)曲線及びAUC(area under curve)が用いられる。MPV抜きのモデルと比較して、MPV込みのモデルでは1年,2年,3年,平均の予測精度がそれぞれ向上することが分かった。(Figure 2 in Data Supplement)

Discussion

本研究ではCAS前のMPV>10.1の患者でMPV<10.1の患者と比較して3倍以上のISRのriskを持っていることが明らかとなった。恐らくMPVとCAS後のISRの関連を明らかにした初めての研究であると思われる。ISRは施術後の早期に起こる新生内膜過形成が原因であると考えられてきた。血小板は血管平滑筋細胞の遊走及び増殖を促進することで新生内膜過形成の中心的な役割を果たす。血小板α顆粒は血管平滑筋細胞に対し走化的かつ分裂促進的に作用する血小板由来成長因子(PDGF)を含んでいる。血管形成術及びステント留置術後、血小板は障害部位に固着し、PDGFを含むα顆粒の成分を放出する。更には白血球-血小板 相互作用は新生内膜過形成の開始及び促進に非常に重要である。炎症細胞は成長因子や走化性因子を放出し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMT; Matrix Metalloproteinase)などの酵素を産生することで細胞外成分を退化させ、細胞遊走を容易にすることで新生内膜過形成を促進する。

MPVとCAS後のISRの関連には3つのmechanismが考えられる。一つは、MPV高値は血小板の大きさ及び活性の指標であると考えられているためである。大きい血小板には沢山の血小板顆粒が含まれており、それにより傷害部位のPDGF濃度が高くなる。それ故MPV高値は患者にとって新生内膜過形成の能力を高めることになる。二つ目に、動脈内膜が血小板を活性化させ、白血球を傷害部位に遊走させることが挙げられる。白血球-血小板 相互作用は新生内膜過形成を悪化させる炎症反応を惹起する。炎症反応はMPV高値の患者では血小板活性が強いため、更に強いものとなる。最終的に、MPV高値は網血小板もしくは幼弱血小板の増加を反映しており、それらは血小板のturn overの指標とされている。血小板 turn overの高回転は血小板凝集と関連し、抗血小板療法に対する反応性が低いことが示されている。

さらに、本研究では病変長と残存狭窄が著明にCAS後のISRと関連していることが判明した。この発見はISRのrisk factorに関する複数の研究の結果と同様のものである。残存狭窄は再狭窄のrisk factorであり、CAS後の完璧な造影結果は必須ではないという意見と対立する。後拡張圧が高いことによる塞栓症及び新生内膜増殖のrisk上昇を考慮すると、残存狭窄をなくすための手段としては前拡張が効果的である可能性がある。

本研究ではMPVはCASの手技自体及び短期間の抗血小板療法に明らかな影響は受けなかった。いくつかの研究で抗血小板療法によるMPVへの影響について報告はあるが、結果は一貫性に乏しいものである。ある研究ではMPVは1週間の低用量アスピリン治療では影響を受けないと報告されている。他の小規模の研究ではMPVは4週間の抗血小板療法の後に低下したと報告されている。これらの結果より、抗血小板療法を強化し、長期化すればMPVを低下させられる可能性があることが示唆される。

本研究の結果を解釈する際には注意を要する点がある。本研究では治療前後のいくつかの薬の影響を考慮していない。過去の研究では降圧薬、高脂血症治療薬、糖尿病薬はMPV値に影響を及ぼすと示唆されている。ISRに対するMPVの影響をより強固なものにするためには更なる研究が望まれる。

結論

MPV高値はCAS後のISRと関連することが示された。施術前のMPVが高い患者ではCAS後の抗血小板療法を強化することが有用である可能性がある。

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