循環器内科

心不全の病態

12月 4, 2017

心不全の病態

慢性心不全

慢性心不全

心不全とは心臓のポンプの働きが低下して、全身が必要とする血液を十分に送り出すことが出来なくなった状態の事を言います。その中でも収縮の低下:血液を送り出す働きが悪くなる状態と拡張性の低下:心臓が送る血液を吸い込む働きが悪くなる場合に分かれます。心不全の症状として

・坂道や階段での息切れ
・日中の尿量・回数の減少
・手足が冷たくなる
・体がだるい   など収縮力が低下し、全身に必要な血液が足りなくて起こる症状と
・体重が増えた
・夜間の尿量・回数の増加
・食欲がなくなった
・足がむくむようになった
・夜苦しくなったり、咳が出るようになった  など体に血液が滞ってしまいうっ血することによっておこる症状に分かれます。

夜間の尿量が増える理由としては床に就くことで腎臓に血液が送られ尿が作られるためです。
心不全の主な原因は心筋梗塞、高血圧、弁膜症、心筋症などがあげられます。
心不全は管理方法が難しい病気でもあり入退院を繰り返したり、突然死のリスクが高い病気でもあります。悪化と寛解を繰り返しながら心臓の機能は徐々に衰えていき死に近づいて行きます。
心不全患者は再入院を繰り返すことがとても多く、文献によると6カ月以内では約27%、1年以内では35%と言われています。当院でも1-3カ月程度で再入院になる方も少なくありません。こちらのスライドは一般的に示されている再入院の原因を表した円グラフです。
塩分・水分制限が守れず再入院になる患者が約3割。過労やストレスにより再入院になる患者が約2割。内服が守れず再入院になる患者が約1割でした。この円グラフからも分かるように、生活習慣の改善、内服管理等の疾患管理によって心不全の悪化を防ぐことが出来るのが分かります。
 急性増悪期の主な治療パターンとして、①外来で内服調整②外来で利尿剤の注射実施③入院し利尿剤の投与と内服薬の調整④入院し安静制限、酸素投与、強心剤・利尿剤投与、膀胱カテーテル留置に分かれると思います。これを見て分かるように、軽症の方が治療の負担も少なく、入院・通院期間も短く済むことが分かると思います。重症になるにつれ心臓への負担も大きく、心機能の衰えにもつながると思います。
 そこで、より軽症の段階で患者さんや周囲のサポートの皆さんが心不全の症状に気付くためにセルフモニタリングによる心不全症状の早期発見、疾患に対する知識の提供を心不全手帳という形にし、患者への配布を目的としました。また、地域の診療所や病院での連携だけでなく、高齢社会に伴いケアマネジャーや訪問診療、訪問看護、訪問介護の利用も増えています。そのため、医療者での連携をはかれるページを作成し、情報交換が行えるように工夫してみました。
心不全手帳の最初の方には心不全についてや、早期受診を促すためにもこんな症状は注意した方が良い、内服薬、検査、退院後の生活の留意点について記載してあります。

こちらのページは、入院中に患者さんと医療者で記載をする欄で、心不全の原因や、ご自分の生活習慣を振り返ることで退院後の生活でどのような点に注意していくかを考えられるようにしています。そして、現在は入院中どのような指導を行ったか情報を得ることが大変だと感じたので、入院中にどのような指導を受けたのかチェックする項目も作りました。

そしてこちらのセルフチェックシートは入院中から記載を行い1年分記載ができるようになっています。体重や血圧だけでなく心不全症状や服薬のチェックをする項目もあります。記載ではなくチェックするだけの簡易化したので継続できるかと思います。1ページが一週間分になるので下のフリー項目には生活の中で感じた心配な点やイベントなどを記載してもらおうと考えています。
後半部分は医療者向けのページになっています。

慢性心不全について急性期を離脱し慢性期管理を必要とする患者さんに対する診療時の注意点等が記載されています。
こちらは患者さんの情報を記載するページになっています。入院中に主治医が記載し、心不全の原因やデバイスだけでなく退院時のBNPやEF、心臓リハビリテーションの有無が分かるようになっています。
このページは外来診療時の検査の結果、指導内容等を記載する場所になりますので、受診時に記載をお願いします。
医療者通信欄は退院時に注意してほしいところだけでなく、医療者が患者さんと接する中で気になる点や他の医療者に注意してほしいところなどを記載し、情報の交換・共有が出来るように作成しました。

この手帳を使用する事で、病院のスタッフだけでなく、診療所の先生方、患者さんに関わる訪問診療、訪問看護、訪問介護、通所サービスのみなさんが情報を共有し、患者さんが自宅で過ごすためのツールになればいいと考えています。

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