循環器内科

アデノシン

4月 6, 2016

アデノシン

アデノシン

アデノシン

アデノシンには冠抵抗血管を拡張するのみならず、心筋や微小循環の保護効果があります。STEMI症例において24~48μgのアデノシンをカテーテルから責任冠動脈の遠位部 に注入した検討では、PCI 後の冠動脈血流、心筋能が改善し、予後も改善したとしています。しかしながら、アデノシンの持続静脈投与では梗塞サイズの縮小効果は乏しいとされています。

Na+-H+交換系阻害薬

Na+-H+交換系阻害は細胞内 Ca2+過負荷を抑制することにより、虚血-再灌流障害を軽減する可能性があります。実験的には冠微小循環機能を改善し、心筋血流を改善する効果があります。しかし、臨床例におけるAMITY試験においては、Area at riskの大きい症例のみにしか心筋梗塞サイズの抑制効果を確認するに至っておらず、投与タイミング、投与量などに関して、まだ検討の余地があります。

ニコランジル

ニコランジルはKATPチャネル開口薬と硝酸薬NOのハイブリッドです。抵抗血管の血管内皮細胞にあるKATPチャネルは開口することにより血管拡張作用を有し、心臓に対する前負荷、後負荷の軽減とともに心筋血流の増加効果が期待されています。ミトコンドリア表面のKATPチャネルは、プレコンディショニングの細胞内シグナル経路における end effectorであることが知られています。そのため、ニコランジルは虚血心筋保護効果を増強する作用が期待されています。STEMIに対してPCIを行った患者におけるニコランジル追加療法の有効性を示す報告は、おもに小規模で単施設という限定はあるものの多くの報告があります。Iwakuraらのメタ解析の報告では、ニコランジル投与によりPCI 後の良好な冠血流を示すTIMI血流分類3が高率に認められました。また、ニコランジルの冠動脈内投与はno reflow部位を含む梗塞心筋の血流増加と慢性期壁運動の改善や冠微小血管抵抗指数の改善に有効であると報告されています。急性心筋梗塞治療は “Time is Muscle”であり、可及的早期に質の良い再灌流を得る努力を怠らないことに尽きます。治療戦略においても、煩雑な手技に手間をかけるよりも、スムーズに安全に再灌流を心がけることを忘れてはなりません。そのためにも、個々の症例で、的確で迅速な病態把握、適切な治療手技の選択、そして素早い薬物療法の選択が重要であり、それにより長期予後の改善に努めることが求められます。

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