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船橋呼吸器内科

クリゾチニブ投与中に下部消化管穿孔を合併したが、アレクチニブに変更後経過良好なALK肺癌の一例

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クリゾチニブ投与中に下部消化管穿孔を合併したが、アレクチニブに変更後経過良好なALK肺癌の一例

<はじめに>
クリゾチニブはALK融合遺伝子陽性切除不能な進行・再発非小細胞がんに対して2012年に承認された分子標的薬である。その効果と認容性の高さから肺癌診療ガイドラインでも1次治療・2次治療ともにグレードAの治療として推奨されているが、最近では重症の食道炎や食道潰瘍といった消化管毒性に関する症例が報告されている。今回我々は、クリゾチニブ投与中に下部消化管穿孔による腹腔内膿瘍を発症した後、アレクチニブに変更して経過良好な高齢男性の1例を経験したので報告する。
【症例】86歳、男性
【主訴】湿性咳嗽
【現病歴】
平成XX年X月より湿性咳嗽が出現し、9月に当院呼吸器内科を紹介初診
精査の結果、肺腺癌(c‐T4N2M1a:StageIV)の診断となった。平成26年10月にカルボプラチン+ペメトレキセドによる化学療法を開始したが、倦怠感と食思不振が強く1コースのみで中止した。 また、胸水中のEML4-ALK融合遺伝子 m-RNA増幅が陽性であったため、クリゾチニブ導入目的でXX月XX日に当科に入院した。
【既往歴】
高血圧、脂質異常症、胃潰瘍
肺腺癌(平成XX年XX月にカルボプラチン+ペメトレキセド1コースのみ施行)
【アレルギー】
なし
【生活歴】
喫煙 20本/日(20歳から56歳まで)
【入院時現症】
身長 152.4 cm、体重 45.8 Kg、体温 36.0℃、心拍数 85 回/分、血圧 113/69 mmHg、SpO₂ 98 %(室内気)、身長 152 cm、体重 48 kg、Performance Status 1、身体所見に明らかな異常は認めなかった。
入院時検査所見:
CEA 21.4ng/ml、CYFRA 4.2 ng/mlと上昇を認めた。
喀痰細胞診(2014年9月17日) classⅤ
胸水細胞診(2014年9月12日) classⅤ、腺癌の疑い
EGFR変異陰性、RT-PCR法でEML-4 /ALK融合遺伝子陽性
胸水細胞診(2014年9月29日)
ALKタンパク(高感度IHC)陽性、ALK融合遺伝子(FISH)陽性、
入院時胸部X線写真:右下肺野を中心に網状影、浸潤影を認める
入院時胸部CT写真:右S6 に腫瘤影、周囲に網状影を認める。少量の胸水を認める。

【入院後の臨床経過】
入院翌日よりクリゾチニブ 500 mg/dayの内服を開始した。また制吐目的にグラニセトロン 2mg/dayとデキサメタゾン 3 mg/dayを併用した。有害事象としてはGrade1の味覚障害と視覚障害が生じたのみであり、投与6日目の胸部X線写真上では明らかな腫瘍縮小が見られた。
投与9日目より38℃台の発熱、嘔吐、下痢を認めたためクリゾチニブを中止し、投与10日目には一時的に解熱し、下痢も消失した。しかし、同日再度下痢と発熱、悪寒を認め、感染性腸炎の可能性も考慮し、各種培養検査を提出の上CTRX 2 g/day投与を開始した。その後も腹痛がや発熱が改善せず、右下腹部に限局する圧痛と反跳痛を認めたため投与14日目に腹部造影CTを施行したところ、腹腔内に膿瘍形成を認めた。透視下に経皮的膿瘍穿刺を行い造影を行ったところ、膿瘍腔が造影された。抗菌薬をMEPM 3.0 g/dayに変更し、経皮的に7.0 Frのpig tail カテーテルを用いてドレナージを継続した。徐々に体温、炎症反応の改善見られ、投与22日目、膿瘍腔へ造影剤を注入しCTを施行した。膿瘍腔の縮小を認めたが造影剤がS状結腸、直腸に流入していることから膿瘍腔と腸管に瘻孔ができており、腸管穿孔による腹腔内膿瘍と診断した。洗浄、ドレナージを繰り返し、瘻孔の閉鎖が見られ、炎症反応も改善し、投与32日目に独歩退院した。
その後、外来で無治療経過観察としていたが、12月22日 胸部X線写真で原発巣の増大と、胸水貯留を認めた。再度胸腔穿刺を施行し、胸水検体でALK(高感度IHC)陽性、 ALK FISH陽性であることを確認したのち、2015年アレクチニブを開始した。その後はCEAは低下し、ADLも良好で現在も治療継続中である。

考察
EML4-ALK遺伝子転座は2007年に曽田、間野らによって初めて報告され(1.)、ALK融合遺伝子は非小細胞肺癌の 2~5%に存在するとされている。
ALK阻害剤であるクリゾチニブは2012年に日本で承認され、1次治療としてクリゾチニブと標準的化学療法の有効性と安全性を比較した第Ⅲ相試験では、クリゾチニブ群で無増悪生存期間が有意に延長(中央値はクリゾチニブ群が10.9カ月、化学療法群が7.0カ月)し、奏効率も有意に高い(74%vs45%)こと結果となった。 (2)
クリゾチニブ の副作用としては、臨床試験(PROFILE 1001.1005.1007)では視覚異常、嘔気、下痢、嘔吐、浮腫、肝酵素上昇、便秘などが報告されており、いずれもほとんどがGrade1/2と軽症であった。(3 1001、1005 ファイザーのやつ.4 1007アリス)。また、消化管毒性だけでみると下痢(41-60%)、便秘(28-42%)、嘔吐(39-47%)が挙げられるが、G3以上のものは1%未満であり、消化管穿孔の報告はみられなかった。減量や中断することなく対症療法でのマネージメントが可能と考えられている。(5cappuzzo)
現在、クリゾチニブは効果と忍容性の面から肺癌診療ガイドライン2014年版、進行期のALK遺伝子転座陽性非扁平上皮癌に対し、1次治療、2次治療ともにグレードAで推奨されている。
市販後調査で、小腸穿孔 1例、 食道穿孔 1例が報告され、重症の食道炎、食道潰瘍といった症例報告も散見される。( Pfizer Oncology 調査 1607例)また、肺癌化学療法中の消化管穿孔は多数報告があるが、クリゾチニブによるが本症例のように下部消化管穿孔の報告はまだない。化学療法中の消化管穿孔の原因としては、治療による腸管転移巣の壊死3)、好中球減少時の腸管壁への細菌浸潤)4)5)、抗癌剤による腸粘膜障害6)、ステロイド併用による粘膜障害7)などが考えられる 
本症例では、腹部造影CT上は明らかな転移巣や憩室は認めておらず、保存的治療により腹腔内膿瘍が改善したため、穿孔を起こした腸管の状態や病理組織の検討はなされていないが、高齢者は組織が脆弱であり、Crizotinib の作用による腸蠕動活動の変化が腸管内圧の上昇や、何らかの感染が契機となったことが推測された。
また、クリゾチニブからアレクチニブに変更後は大きな有害事象なく治療を継続している。クリゾチニブは、c-MET、ALK、ROS1の受容体チロシンキナーゼ阻害剤であることから消化管穿孔に関して、ALK遺伝子以外の影響が関与している可能性も考えられる。
個別化医療が進む昨今、分子標的薬は承認までの期間が短く、予測困難な副作用が生じる可能性があるため、十分な注意が必要であると考えられた

考察(出典つき)
EML4-ALK遺伝子転座は2007年に曽田、間野らによって初めて報告され(Soda M, et al : Identification of the transforming EML4-ALK fusion gene in nonsmall-cell lung cancer. Nature 448 : 561-6, 2007.)、ALK融合遺伝子は非小細胞肺癌の 2~5%に存在するとされている。

ALK阻害剤であるクリゾチニブは2012年に日本で承認され、1次治療としてクリゾチニブと標準的化学療法の有効性と安全性を比較した第Ⅲ相試験では、クリゾチニブ群で無増悪生存期間が有意に延長(中央値はクリゾチニブ群が10.9カ月、化学療法群が7.0カ月)し、奏効率も有意に高い(74%vs45%)こと結果となった。年齢、性別、人種、喫煙歴などに関係なく高齢者でも安全にできる。
(SolomonBI. First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer N Engl J Med. 2014 Dec 4;371(23):2167-77)
・Critzotinib の消化管毒性としては
下痢(41-60%)、便秘(28-42%)、嘔吐(39-47%)(
8.
Management of crizotinib therapy for ALK-rearranged non-small cell lung carcinoma: an expert consensus.Cappuzzo F, Moro-Sibilot D, Gautschi O, Boleti E, Lung Cancer. 2015 Feb;87(2):89-95.)が知られているが、G3以上のものは1%未満であった。
・PROFILE1005 試験では全Gradeの下痢が49%、便秘が39%であったが、G3以上のものは1%以下だった。???
Crinò L, Kim D, Riely GJ, et al.
Initial phase II results with crizotinib in advanced ALK-positive non-small cell lung cancer (NSCLC): PROFILE 1005. J Clin Oncol. 2011;29(Suppl) Abstr 7514.
クリゾチニブは効果と忍容性の面からもALK陽性進行非小細胞肺がんにおいてガイドラインでは1次治療として推奨されている。

また、臨床試験では消化管穿孔の報告はなく、食道炎、食道潰瘍の報告がある市販後調査で、小腸穿孔 1例、 食道穿孔 1例が報告されたのみだった( Pfizer Oncology 調査 1607例)
肺癌化学療法中の消化管穿孔は多数報告があり、その原因としては、治療による腸管転移巣の壊死3)、好中球減少時の腸管壁への細菌浸潤)4)5)、抗癌剤による腸粘膜障害6)、ステロイド併用による粘膜障害7)などが考えられている 
3)Surg Today 31;358-362,2001
4)Curr infect Dis Rep;9(2);116-20,2007
5)AmjGastroenterol99;1175-90,2004                                 6)Cancer 63;1944-50,1989
7)J Clin Oncl 6;291-296,1998
また、本症例では、保存的治療により腹腔内膿瘍が改善したため、穿孔を起こした腸管の状態や病理組織の検討はなされていないが、腹部造影CT上は明らかな憩室は認めなかった。高齢者は組織が脆弱であり、Crizotinib の作用による腸蠕動活動の変化が腸管内圧の上昇や、何らかの感染が契機となったことが推測された
8)日本腹部救急医学会雑誌33(4);671-675,2013
個別化医療が進む昨今、分子標的薬は承認までの期間が短く、予測困難な副作用が生じる可能性があるため、十分な注意が 必要であると考えられた

参考文献
●クリゾチニブによる薬剤性食道炎を来したEML4/ALK融合遺伝子陽性肺腺癌の1例
平井 理子(旭川医科大学附属病院 呼吸器センター), 佐々木 高明, 山本 泰司, 大崎 能伸
Source: 肺癌 54巻2号 Page68-72(2014.04)

●crizotinibによる食道炎を発症したEML4-ALK陽性肺腺癌の1例
山添 雅己(函館市立函館病院 呼吸器内科), 西條 浩, 石川 立, 小林 智史, 高橋 隆二
肺癌 (0386-9628)53巻7号 Page840-845(2013.12)

●Esophagitis resulting from treatment with crizotinib for anaplastic lymphoma kinase rearrangement-positive lung adenocarcinoma: A case report.
Takakuwa O, Oguri T, Yokoyama M, Hijikata H, Uemura T, Ohkubo H, Maeno K, Niimi A.
Mol Clin Oncol. 2014 Jan;2(1):121-123. Epub 2013 Sep 20.

●Esophagitis: a novel adverse event of crizotinib in a patient with ALK-positive non-small-cell lung cancer.
Srivastava N, VanderLaan PA, Kelly CP, Costa DB.
J Thorac Oncol. 2013 Mar;8(3):e23-4
●Crizotinib-induced esophageal ulceration: a novel adverse event of crizotinib.
Park J, Yoshida K, Kondo C, Shimizu J, Horio Y, Hijioka S, Hida T.
Lung Cancer. 2013 Sep;81(3):495-6.

アレセンサに変更後経過良好のやつ
●Successful treatment with alectinib after crizotinib-induced esophageal ulceration.
Yoneshima Y, Okamoto I, Takano T, Enokizu A, Iwama E, Harada T, Takayama K,
Lung Cancer. 2015 Mar 20. pii: S0169-5002(15)00164-6. PMID: 25837798●Successful treatment of crizotinib-induced dysgeusia by switching to alectinib in ALK-positive non-small cell lung cancer.
Koizumi T1, Fukushima T2, Tatai T2, Kobayashi T2, Sekiguchi N2, Sakamoto A2, SasakLung Cancer. 2015 Apr;88(1):112-3.

☆第1相
Activity and safety of crizotinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer: updated results from a phase 1 study.
Camidge DR1, Bang YJ, Kwak EL, Iafrate AJ, Varella-Garcia M, /Lancet Oncol. 2012 Oct;13(10):1011-9.

☆PROFILE 1005  phase II
J Clin Oncol. 2015 Jan 26. : .2014.59.0539.
Clinical Experience With Crizotinib in Patients With Advanced ALK-Rearranged Non-Small-Cell Lung Cancer and Brain Metastases.
Costa DB1, Shaw AT2, Ou SH2, Solomon BJ2, Riely GJ2, Ahn MJ2

有害事象は、悪心(57.4%)、嘔吐(43.4%)、下痢(42.6%)、
 便秘(27.2%)といった消化器症状で、いずれもGrade1-2であった。
 視覚関連の有害事象も58.8%と多かったが、これもGrade1-2。
 Grade3以上有害事象は25.7%の患者でみられたが、ほとんどがトランスアミナーゼ

☆PROFILE 1007 
Patient-reported outcomes and quality of life in PROFILE 1007: a randomized trial of crizotinib compared with chemotherapy in previously treated patients with ALK-positive advanced non-small-cell lung cancer.
Blackhall F, Kim DW, Besse B, Nokihara H, Han JY, Wilner KD, Reisman A, Iyer S, Hirsh V,
J Thorac Oncol. 2014 Nov;9(11):1625-33
3相
悪心 (55%)、嘔吐47%、下痢 (60%)、便秘 42%

☆PROFILE1014 Ptダブレットとの比較 1次治療 3相
First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer.
Solomon BJ, Mok T, Kim DW, Wu YL, Nakagawa K, Mekhail T, Felip E, Cappuzzo F, Paolini J, Usari T, Iyer S, Reisman A, Wilner KD, Tursi J, Blackhall F; PROFILE 1014 Investigators.
N Engl J Med. 2014 Dec 4;371(23):2167-77.
悪心 56% 下痢 61%、便秘 43%、嘔吐 46%

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