産婦人科

妊娠および産後の過ごし方

9月 9, 2016

妊娠および産後の過ごし方

妊娠中には

妊娠中からお母さんになることをすこし考えて準備しておきましょう。

1.お母さんになったご自分を想像しましよう
2.出産によって、家庭生活が変化します
3.夫婦関係も変化しますので、配偶者と話し合いましょう
4.同じような妊婦さんの仲間をつくりましょう

産後のすごし方

身体的には分娩前後の急激な内分泌変化がおこり、妊娠前の状態に回復するまでかなりの時間がかかります。心理的には母親になった喜びを自覚する一方、育児中心の生活に当惑し、精神的に負担のかかる時期を迎えます。

妊娠中または産後に「里帰り分娩」をされる方は実家で充分に養生してください。また核家族の方は実母に自宅に来てもらって、しばらく世話を受けることも一つの方法です。産後1ヵ月検診を受けてもまだ体の回復が充分でない場合は体の状態に気持ちを合わせて、夫や家族の協力を得て焦らずに静養してください。

1.物事の優先順位をつけましょう
2.休養を十分にとりましょう
3.お母さんのために楽しい時間をつくりましょう
4.友達との付き合いを大切にしましょう
5.自分の気持ちを周囲に伝えましょう

育児

1.赤ちゃんとのおつきあいを上手にしましょう
2.周囲の人に助けを求めましょう
3.将来のことを考えましょう

妊娠・出産に伴うこころの病気

1)妊娠中に、気分が落ち込みがちになります
妊娠中ですが、家族のことから不安がおさまらず、次第に気分も落ち込み、食欲や、睡眠も悪くなりました
- 妊娠期間中は心理的に安定した時期といわれていましたが、いまでは妊娠うつ病という病気が10人から20人に1人の女性が妊娠中(特に前期)に体験することが分かっています。

2)赤ちゃんがかわいくないのですが
今回はれて女児を出産しました。夫も女の子を希望していました。妊娠経過も順調で、分娩も思ったより軽くて済みました。1ヶ月健診も無事終了しました。聞かされていたような産後のゆううつもありませんでした。でも、どうしても赤ちゃんがかわいく感じられないのです。なかなか泣き止まないと怖くなって赤ちゃんをベビーベッドに置いて後ずさりしてしまいます。次第に赤ちゃんが泣き止まないと、「うるさい!だまれ!」と大きな声で怒鳴ってしまいました。自分でも怖くなって、市の保健師に電話をかけたところ、保健師が家庭訪問に来てくれゆっくりと話を聞いてくれました。産んだ自分の子どもはかわいくて仕方がないのが母性だと多くの人は信じてきましたが、必ずしもそうではないのです。相性の悪い母子もいるのです。最近このこと愛着障害と呼ぶようになってきています。愛着障害は母親失格の証拠ではありません。メンタルヘルスケアの専門家と相談する問題なのです。

3)産後直後に自然に泣けてきます
今回男の子を生んで2日目から,夫に対するなぜだかわからない怒りの感情と悲しい気持ちが現れました。すでに女の子がいるから「次は男」と期待していたとおりなので、自分でもどうして涙が出てくるのか分かりません。ひとりときは涙を出して大泣きに泣いてしまいました。子どもを育てていけるか不安が強くなりました。しかし,こういう状態は3日続いただけで,退院したときにはいつもの明るいまゆみさんに戻っていました。この現象は、マターニティ・ブルーズといわれ、産後に数人の女性に1人が経験するものです。軽い抑うつ感、不安感、怒り、不眠などがありますが、対人関係や日常生活に影響を与えるものではありません。期間も短くて終わってしまいます。産後うつ病に似ていますが、自然になおっていきます。ただし、長期間持続した場合には、後に述べる産後うつ病になることが高いので、注意しましょう。

4)自宅にもどって気分が落ち込みやる気がしません。
妊娠経過は順調でした。赤ちゃんを生んで3週間は実家に里帰りしていました.ところが、自宅にもどってから、わけもなく気持ちがふさぎこむようになりました。食欲もなくなり,無理に食べてもおいしくありません。ちょっと買い物に行っても,ぐったり疲れます。献立を決めるにも時間がかかるようになりました。専門的治療を受けて、元気も取り戻してきました。この病気は分娩後の情動的および身体的な要因によっておこってきます。少なくとも日本では10%前後の母親がこの病気にかかるといわれています。マタニティ・ブルーに対して産後うつ病は中等度から重度のいろいろな症状を伴います。気分のいい日もあれば、悪い日もあり、症状が変化しやすいのも特徴です。

産後のこころのチェックリスト

次のような症状を自己チェックしてみてください。
・疲労感、不眠
・不安、緊張、パニック
・イライラする
・希望を持てない
・集中力や記憶力が弱くなる
・気分が変化しやすい
・せかせかする
・興味に欠ける
・自分を責める
・自分を情けなく思う
・食欲がなくなる
・子供や夫に愛情を感じなかったり、持てない

お母さん自身も自覚できずに努力不足のように思ったり、周囲も怠けているのではないかと考えがちであります。
産後のこころの病気は種類や重症度によって治療が異なりますが、適切な薬物療法や精神療法によって治ります。出産後は専門医にかかりにくいものですが、早期に受診して適切な治療を受けることが大切です。産後のこころの病気は早期に治療しないと遷延しやすい場合があります。

周産期と家族のサポート

産後のこころの病気は母親の健康のみならず、時には家庭生活、職業、母子関係などを損なうことがあります。かりにお母さんが産後のこころの病気にかかった場合には、体の病気と基本的に変わらないという理解が必要であり、受容的態度で接することが大切であります。産後のこころの病気は家族からの支援、理解が最も重要であります。

保健福祉機関と医療機関の利用のしかた

これまでみてきた女性たちと同じような体験をしたら、そうしたこころの問題で相談する先として医療機関や福祉機関も考えてみましょう。おかしいなと思ったら、気楽に相談や受診をしましょう。

-産婦人科